132:なんと!蒼井さんだ!_5

彼はただ蒼井紫苑をそんなに苦しませたくなかっただけだ。

だから、あの猫を処分しなくても構わない。少なくとも蒼井紫苑に見せてはいけない。

もちろん、蒼井華和があの猫と一緒に引っ越してくれれば、なおさら良かった。

蒼井紫苑が心を痛めずに済むから。

蒼井遥真は蒼井陽翔を見つめ、「お前の考えは行き過ぎだぞ。妹が戻ってきたばかりなのに、追い出そうとするのか?」

「追い出そうとしているわけじゃない。ただ紫苑にあの猫を見せたくないだけだ!」蒼井陽翔は説明した。

蒼井遥真は続けた。「紅音も紫苑も俺たちの妹だ。陽翔、兄として公平でなければならない。紫苑と一緒に育ったからといって、紫苑に肩入れするのはよくない!」

蒼井陽翔は自分が秀才が兵士に会ったようなもので、道理が通じないと感じた。

明らかに家族全員が蒼井華和を贔屓しているのに。

しかし今や、蒼井遥真の目には、自分が蒼井紫苑を贔屓しているように映るのだ。

まったく笑止千万だ。

蒼井陽翔はため息をつき、「そう思うなら、私にはどうしようもない」

どうやら、自分で蒼井紫苑を慰めるしかないようだ。

蒼井遥真は続けた。「叱られたくないなら、両親の前では一言も言わない方がいい」

蒼井陽翔がもし言おうものなら、蒼井修誠は本当に彼を殴るだろう。

蒼井陽翔も蒼井修誠の気性を知っていた。

当然、蒼井修誠の前では言えるはずがない。

そうでなければ、蒼井遥真の前で話すこともなかっただろう。

もし蒼井遥真が自分と同じ意見なら、両親も耳を傾けてくれるかもしれない。誰にもわからないが……

一時間後。

蒼井家の専用車が病院の入り口に到着した。

一行は病室に向かった。

春日吉珠と朝倉渚は事前に連絡を受けていなかったため、入ってきた人々を見て少し呆然としていた。

篠崎澪は蒼井華和の手を引き、二人の前に連れて行って紹介した。「紅音、こちらが叔母さんたちよ」

「叔母さん」

春日吉珠と朝倉渚はその場で固まってしまった。

蒼井華和が美しいことは知っていたが。

しかし、こんなにも美しいとは思わなかった。

この眉目は、絵にも描けないほどだろう。

特に春日吉珠は、蒼井華和の手を取り、感嘆して言った。「紅音は仙女のようね!」

「ありがとうございます」