132:なんと!蒼井さんですわ!_2

その言葉を聞いて、春日吉珠はほっと胸をなでおろした。

「紅音はいったいどんな感じなの?」春日吉珠は続けて尋ねた。

朝倉渚は笑いながら答えた。「きっと可愛いわよ!私たち蒼井家の遺伝子はこんなに良いんだから、紅音が劣るわけないでしょう?」

春日吉珠は頷いて、「そうね。私も本当に楽しみだわ」と言った。

義姉妹は互いに言葉を交わし合った。

蒼井紫苑は外に立ったまま、眉をひそめた。

楽しみ?

春日吉珠に何が楽しみなことがあるというの。

私だって蒼井家の人間じゃないの?

待っていなさい。

今は蒼井紅音にどれだけ期待していても、その時が来れば、それだけ失望することになるわ。

私は蒼井華和のことを調べた。

生まれも育ちも田舎の村娘。

何もできない。

蒼井家の人々の長所なんて、彼女には微塵も備わっていない。

そう考えると、蒼井紫苑は口角を上げた。

「ここで何してるの?」

その時、突然空気を切り裂くような声が聞こえた。

この突然の声に蒼井紫苑は驚いて振り返ると、そこには蒼井悠唯と朝倉渚の長男がいた。

蒼井詠真。

蒼井詠真は今まさに反抗期真っ只中で、気性が少し変わっていて、普段はバスケットボールに夢中で、病院に来る時でもボールを抱えていた。

蒼井詠真と初めて会った時のことを覚えている。彼のあの傲慢な態度で、蒼井紫苑なんて相手にもしなかった。

しかし、蒼井紫苑の努力の甲斐あって、蒼井詠真の態度は随分良くなっていた。

それでも、彼は未だに蒼井紫苑のことを姉さんと呼ぼうとはしなかった。

普段は「おい」とか「ねぇ」といった言葉で、その一声の「姉さん」を代用していた。

「詠真が来たのね!」

蒼井紫苑は笑顔で振り返った。

蒼井詠真はバスケを終えたばかりで、額には薄く汗が浮かんでいた。「なんで入らないの?」

「今来たところよ」蒼井紫苑は少しも気まずそうな様子もなく、「行きましょう、詠真。一緒に入りましょう」

蒼井詠真は深く考えることもなく、蒼井紫苑の後に続いた。

二人は一緒にドアを押して中に入っていった。

「母さん」

蒼井詠真は朝倉渚の側に行った。

そして礼儀正しく春日吉珠に挨拶をした。「叔母さん」

春日吉珠は笑顔で頷いた。「いい子ね」

言葉に続いて、春日吉珠は「詠真は今年十七歳でしょう?」と尋ねた。