蒼井紫苑は黙っていた。
不満げな様子で。
彼女が黙っているということは、同意しているということだ。
白川衣織は心の中の考えをより確信し、蒼井陽翔と共に蒼井紫苑を守ろうと決意した。
そのとき、白川衣織の携帯が鳴った。白川衣織は携帯を取り出して確認し、「紫苑、ちょっと外に行ってくるわ。誰かが私を探してるの」と言った。
「うん、行ってきて」
白川衣織は外に向かった。
彼女が出て行ってすぐ、蒼井紫苑のもう一人の親友が近づいてきた。
「紫苑」
蒼井紫苑は笑顔で振り返り、「静雅」と答えた。
朝倉静雅は優雅な足取りで近づき、「衣織は見かけなかったけど?」と尋ねた。
「外に行ったわ」と蒼井紫苑は答えた。
朝倉静雅は頷いて、「さっき外で蒼井大婆様を見かけたわ。すごく嬉しそうだったわよ。笑顔が止まらないみたいだった。あなたの新しいお姉さん、なかなかやるわね」
蒼井紫苑は蒼井家で何年も過ごしてきたのに、蒼井大婆様の好感を得ることができなかった。
蒼井華和が戻ってきてまだ数日なのに?
このことから、蒼井華和の手腕は並々ならぬものだと分かる。
蒼井紫苑は「お姉さまは確かに私より分別があるわ」と言った。
朝倉静雅は笑って、何も言わなかった。
分別?
もし蒼井家が無名の家であったなら、蒼井華和はそれほど分別があるだろうか?
結局のところ、それは金の力だ。
この莫大な富を、誰が欲しくないだろうか?
しばらくして。
白川衣織も戻ってきた。
蒼井紫苑は「衣織、静雅、お姉さまが出てきたわ。二人を紹介したいの。お姉さまはとても綺麗だから、きっと気に入ると思うわ」と言った。
白川衣織と朝倉静雅は蒼井紫苑の後に続いた。
蒼井華和は蒼井大婆様の後ろについていた。
彼女は艶やかな赤いドレスを着て、高価なエメラルドグリーンの翡翠をつけていた。
翡翠は年寄りっぽいと言われ、通常は年配の人が身につけることが多い。
しかし蒼井華和の首元につけられた翡翠は、むしろ清純な印象を与え、緑色の映えで元々白い肌が、今や透き通るように白く見えた。
彼女の一歩一歩が優雅で、表情の一つ一つが真似のできない気品を漂わせていた。
思わず感嘆の声が上がった。
「本物の蒼井お嬢様がこんなに美しいなんて!」
「蒼井紫苑よりずっと綺麗ね」
「シーッ、声が大きいわよ」