蒼井華和はまるで太陽のような存在だった。
彼女のすべての光を奪い取ってしまった。
いいえ。
だめ。
こんなことは起こさせられない。
蒼井華和はこの家から消えなければならない。
そう考えると、蒼井紫苑は目を細めた。
須藤佳希は蒼井華和を見て、「紅音、じゃあこれで決まりね!約束だよ!その時は私が迎えに行くから!」
「うん」蒼井華和は軽く頷いた。
須藤佳希は何かを思い出したように続けた。「そういえば澪、あなたの家のお婆さんは?」
篠崎澪は笑いながら答えた。「昨夜、三男夫婦に海浜市へ連れて行かれたわ。三が日が過ぎたら戻ってくるって」
「そうなの!」須藤佳希は頷きながら評した。「あなたの家の三男は本当に親孝行ね!」
「ええ」篠崎澪は笑顔で答えた。「次男も三男も本当に親孝行なの」
「やっぱり子供は多い方がいいわね。あなたの家のお婆さんを見てると!私たちももっと産んでおけば良かったわ!」
蒼井華和は嶽本夫婦を二階に案内した。
彼女は早乙女恵子の脈を診た。
早乙女恵子は緊張した面持ちで尋ねた。「蒼井さん、どうですか?」
蒼井華和は早乙女恵子の手を離し、「嶽本奥さん、ご心配なく。脈は安定しています。ただし、妊娠初期なので食事には気をつけてください。山査子や竜眼、ライチなどの果物は控えめにしてください」
早乙女恵子はようやく安堵の息をつき、蒼井華和を見つめた。「蒼井さん、あなたは私たち家族の恩人です。私たち夫婦には何もお返しできませんが、どうかこれだけは受け取ってください」
そう言って、早乙女恵子は古めかしい木箱をテーブルに置いた。
早乙女恵子は続けた。「この箱の中には玉佩が入っています。祖母から譲り受けたもので、災いを払い、安全を守ってくれると言われています」
この玉佩以外に、早乙女恵子は他に良い贈り物を思いつかなかった。
玉佩は赤い天鵞絨の布の上に静かに横たわっていた。
灯りに照らされ、透き通るような輝きを放っており、かなりの年代物であることが一目で分かった。
蒼井華和は言った。「嶽本奥さん、そんな貴重な物は頂けません」
「蒼井さん、もしお受け取りいただけないなら、私たち夫婦は安心して眠れません」
蒼井華和は彼らに再生の希望を与えたのだ。
一つの玉佩どころか。
全財産を投げ出してでも、彼らは喜んで差し出すつもりだった。