149:華和兄が大技を温め、蒼井紫苑が崩壊して湖に飛び込む_2

「蒼井華和はいらっしゃいますか?」

白川衣織は一瞬戸惑ったが、すぐに自分が今は蒼井華和だと気づき、立ち上がって答えた。「はい、います」

白川衣織が立ち上がると、皆が彼女の方を見た。

医療助手は白川衣織を見て、「蒼井華和さんですか?」

「はい、そうです」白川衣織は頷いた。

全く後ろめたさはなかった。

医療助手は続けて言った。「真壁先生の診察室までご案内します」

診察室?

中絶は手術室でするのではないのか?

なぜ診察室に行かなければならないの?

もしかして……

医師は何か気づいたのか?

そう考えると、白川衣織は少し緊張した。

別の病院に変えた方がいいかもしれない。

白川衣織の戸惑いを見て取った医療助手は続けた。「真壁先生が、検査結果に少し問題があって、手術中に起こりうる問題について説明したいそうです」

「分かりました」医療助手の言葉で、白川衣織の疑念は完全に消えた。

白川衣織は医療助手の後について行った。

診察室に着くと。

白衣を着た真壁先生は、マスクをつけた白川衣織を見て、「蒼井華和さんですか?」

「はい」白川衣織は頷いた。

真壁先生は資料を手に取り、「身分確認をさせていただきます」

「はい」

真壁先生は続けて言った。「蒼井華和さん、平安時代の蒼に、女偏の華和。無痛子宮掻爬術を希望されていますね?」

「はい、その通りです」

「これから手術中に起こりうる問題についてお話しします」真壁先生は白川衣織を見つめて、「もう一度確認させていただきますが、あなたは確かに蒼井華和さんですね?」

白川衣織は内心とても緊張していたが、落ち着いた様子を装って、「はい、私が蒼井華和です」

どうせ医師も蒼井華和なんて知らないのだから!

無痛子宮掻爬術なら十数分で手術室から出られる。

十数分後には、新しい人生を手に入れられる。

そうすれば、誰も彼女が中絶手術を受けたことを知ることはない!

そう考えると、白川衣織の緊張は徐々に和らいでいった。

そのとき、突然誰かが飛び出してきて、白川衣織のマスクを外した。

あまりにも素早く、白川衣織は反応する暇もなかった。

そして驚きの声が上がった。「衣織!」