「蒼井華和はいらっしゃいますか?」
白川衣織は一瞬戸惑ったが、すぐに自分が今は蒼井華和だと気づき、立ち上がって答えた。「はい、います」
白川衣織が立ち上がると、皆が彼女の方を見た。
医療助手は白川衣織を見て、「蒼井華和さんですか?」
「はい、そうです」白川衣織は頷いた。
全く後ろめたさはなかった。
医療助手は続けて言った。「真壁先生の診察室までご案内します」
診察室?
中絶は手術室でするのではないのか?
なぜ診察室に行かなければならないの?
もしかして……
医師は何か気づいたのか?
そう考えると、白川衣織は少し緊張した。
別の病院に変えた方がいいかもしれない。
白川衣織の戸惑いを見て取った医療助手は続けた。「真壁先生が、検査結果に少し問題があって、手術中に起こりうる問題について説明したいそうです」