夜、橘秀実と若松山根はホテルに戻り、どうやって朝比奈瑠璃のキャッシュカードを騙し取るか考え始めた。
それは10万円もの大金だ!
今回、朝比奈瑠璃を連れ帰れなくても、10万円を持ち帰れれば上出来だ!
少なくとも当面の危機は脱せる。
若松山根は言った。「この件は急いではいけない。ゆっくりと進めないと。直接要求するのは良くない。」
朝比奈瑠璃は優しく接すれば応じるが、強引なやり方は通用しない人だということが分かる。
これを聞いた橘秀実は不満そうに言った。「私は彼女の母親よ。私がいなければ彼女は存在しないのよ。彼女のお金を私に渡さないで誰に渡すの?」
もし彼女が朝比奈瑠璃を産んでいなければ、この世に朝比奈瑠璃は存在しただろうか?
朝比奈瑠璃のお金は当然、彼女が管理すべきだ!
若干の教育を受けた若松山根は言った。「私たちは今日、彼女とあれだけ長く街を歩いたのに、彼女がどんな人か分からないのか?強引なやり方をすれば、人もお金も失うことになるぞ!」
橘秀実はゆっくりと冷静になった。確かにその通りかもしれない。
若松山根は続けた。「私には計画がある。必ず彼女に自分からお金を渡させることができる。」
「どんな計画?」橘秀実はすぐに尋ねた。
若松山根は橘秀実の耳元に近づき、小声で何かを囁いた。
それを聞いた橘秀実は笑って言った。「いいわ!その方法はいいわ!あなたの言う通りにしましょう!」
朝比奈瑠璃は豚のように鈍いから、きっと何の疑いも持たないだろう。
翌朝早く、朝比奈瑠璃は橘秀実からの電話を受けた。
「瑠璃や、私とお父さんは帰ることにしたの。あなたは一人でここにいるけど、体に気をつけてね。私たちによく電話してちょうだい!大学入試が終わったら、私とお父さんが迎えに来るわ!家族みんなで一緒に暮らしましょう。」
まだ眠っていた朝比奈瑠璃は、これを聞いてすぐにベッドから起き上がった。「お母さん?お父さんと急に帰るって、もう少し遊ぶって約束したじゃない?」
橘秀実の声には涙声が混じっていた。「大丈夫よ、大丈夫。瑠璃、心配しないで。ただ突然帰りたくなっただけよ。あなたは必ず自分の体を大切にしてね。」
橘秀実の声の様子がおかしいことに気づいた朝比奈瑠璃は、すぐに服を着て起き上がり、歯も磨かずにホテルへ急いだ。