「いいえ、ただ急に悲しくなって、誰かに話を聞いてほしかっただけ」
「そうそう華和、蒼井紫苑に気をつけて」朝比奈瑠璃は続けて言った。「今夜彼女に会ったの。彼女はたくさんのことを話してきたけど、全部あなたのことばかりで、一言一句が離間を図るものだった」
あれこれ考えた末、朝比奈瑠璃は蒼井華和にこのことを伝えることにした。
表立った攻撃は避けやすいが、陰謀は防ぎにくい。蒼井紫苑が潜在的な脅威であることを、蒼井華和に知らせなければならない。
「わかったわ、司緒」
どうやら、厄介者の一掃を急がなければならないようだ。
......
翌日の朝。
蒼井華和は早くに目が覚めた。
まだ6時だ。
まず1時間ジョギングをし、帰ってきてから身支度に30分、食事に30分、それから空港まで30分かかる。
10時発の飛行機なので、8時半から9時の間に空港に着けばちょうどいい。