高城ママは黙り込み、ドアの外へ向かって歩き出した。
高城ママが去った後、橘姉はすぐに高城ママが切った爪を集め、五階の書斎へ向かった。
これは蒼井琥翔の書斎だった。
「若様」
声を聞いて、蒼井琥翔は軽く目を上げた。「入れ」
橘姉はドアを開けて入り、笑顔で言った。「若様、ご指示いただいた件です」
そう言って、橘姉は布で包んだ爪を机の上に置いた。
蒼井琥翔は布の上の爪を見て、低い声で尋ねた。「確かに高城ママ本人の爪か?」
橘姉は頷いた。「はい、ご安心ください。高城ママが切るところを私の目で確認しました」
「よくやった」蒼井琥翔は続けて言った。「お前の息子の件は既に話を通してある。明日から直接出社させればいい」
それを聞いて、橘姉は非常に興奮して言った。「ありがとうございます、若様!ありがとうございます!」
母親として、最も心配なのは息子の将来だった。
橘姉の息子は学歴は高くないが、コンピューターに関しては人並み外れた才能を持っていた。しかし、今の社会では学歴が入り口であり、立派な学歴がなければ、どんなに仕事能力が高くても採用されることはない。
そのため、橘姉の息子はずっと適切な仕事が見つからず、才能を活かせる場所もなく、デリバリーの仕事をしていたが、稼ぎは橘姉が蒼井家で働く給料よりも低かった。
今回、息子が蒼井琥翔の理想フライトグループで働けることになり、橘姉は非常に喜んでいた!
多くの大学生でさえ理想フライトグループに採用されないことを考えると、なおさらだった。
蒼井琥翔は軽く目を上げ、タバコに火をつけた。「しっかり頑張るように言っておけ」
そこで一旦言葉を切り、続けて言った。「それと、今日のことは誰にも話してはいけない」
息子の将来のためだけでも、橘姉は一言も漏らすつもりはなかった。「若様、ご安心ください。この件は天知地知、あなたと私だけの秘密です。息子にさえ話すつもりはありません!」
「ああ」蒼井琥翔は軽く頷いた。
橘姉は続けて言った。「では、失礼いたします」
「行け」蒼井琥翔は手を振った。
橘姉は書斎を出た。
一方、蒼井紫苑の住まいには新しい客人が訪れていた。
蒼井紫苑と幼い頃から一緒に育った親友だった。
英語名はサマー。