Sとは蒼井華和のことだった。
つまり、彼が今も日の光の下に立ち、刑務所で毎日ミシンを踏んで仲間に虐められる日々から解放されたのは、蒼井華和のおかげだった。
強い日差しが照りつける。
しかし蒼井陽翔は少しも暑さを感じなかった。
心の中で言い表せない感情が渦巻き、全身が冷え切っていた。
しばらくして、彼は玲姉を見上げ、続けて尋ねた。「朝倉警部、私の無実を証明してくれたのは妹だったんですか。」
「はい。」玲姉は頷いた。
玲姉は蒼井陽翔と蒼井華和の事情を理解していた。
また、蒼井陽翔のこれまでの行動も知っており、この事実を彼に告げたのは、蒼井華和の不当な扱いに対する義憤からだった。
結局のところ、蒼井陽翔はこれまで蒼井華和を実の妹として扱ってこなかった。
彼の心の中には蒼井紫苑という妹しかいなかった。