柚木浩流は頷いて、玲姉の言うことはもっともだと思った。
そう言って、柚木浩流は運転手に向かって言った。「橘さん、発車を。」
「はい。」橘は直ちにエンジンをかけて車を走らせた。
車が少し走ったところで、玲姉は何かに気づいたように柚木浩流の方を向いて言った。「これは帰り道じゃないわね。」
「もちろんさ。」柚木浩流は少し顎を上げて、「前を見てごらん。」
玲姉は姿勢を正し、柚木浩流の視線の先を見た。そこには見覚えのある人影があった。
それは。
蒼井華和だった!
「蒼井さんを尾行しているの?」玲姉は柚木浩流を見た。
柚木浩流は頷いた。
玲姉は続けて尋ねた。「蒼井さんを疑っているの?」
柚木浩流は隠さなかった。彼は玲姉が感情に流されない人間だと知っていた。「ああ、蒼井陽翔は彼女の実の兄だからな。」