槙島秀夫は情熱的に話し終えたが、夏川清美の顔に期待していた感動の表情は見られず、眉をひそめた。「清美?」
彼は今回の面会で、林夏美が何か違うと感じていた。
「少しうるさいわね」時間が遅くなるにつれてバーの人が増え、夏川清美は目を伏せたが、声の調子は変わらなかった。
槙島秀夫はようやく何かに気づいたかのように、「ごめん清美、本田様たちはここで集まるのが習慣でさ。こういう環境に来たことがないのを忘れてた。僕が悪かった」
そう言いながらも、離れる様子はなかった。
「用事があるの……」
「こちらに座ろう」夏川清美が言い終わる前に、槙島秀夫は彼女を引っ張って、先ほど本田様たちが座っていたボックス席に座らせた。
今回は相手の動きがあまりにも突然だったため、夏川清美は避けられず、ただ目に不快感を宿していた。
彼女はこの男が嫌いだった。
以前から彼が林夏美に何度も連絡を取っていて、本来の彼女も確かに長年彼のことを想い続けていた。記憶の中には槙島秀夫についての素敵な思い出がたくさんあった。
それらは林夏美が生きていた時の輝きだった。
夏川清美はそのため自ら会いに来ることにしたが、今日見聞きしたことや感じたことは、槙島秀夫が本来の記憶の中で与えた印象とは全く異なっていた。
時間にルーズで、軽薄で、そして傲慢だった。
さらに山田麗とも友人関係にあった。
そして夏川清美の理解が間違っていなければ、山田麗は林夏美の友人でもあった。
類は友を呼ぶという言葉は、決して誇張ではない。
しかも槙島秀夫は林夏美を何年も知っているのに、久しぶりの再会の最初の約束をバーに設定するなんて、頭が悪いか、それとも単に林夏美の気持ちを全く考えていないかのどちらかだ。
以上のことから、目の前のこの人物は、彼が見せている思いやりのある優しさとは程遠い人物だと理解した。
「清美、何か飲む?」槙島秀夫は横を向いて夏川清美に尋ね、その眼差しは相変わらず甘ったるい情愛に満ちていた。
もしこれが本物の林夏美なら、夏川清美は彼女がきっと感動で胸がいっぱいになっていただろうと確信していた。
「結構よ、話があるの」そう言いながら夏川清美は時計を確認した。
槙島秀夫は彼女の言葉を無視し、ウェイターに向かって指示した。「ウェイター、ブルーハワイを一つと、ブランデーを一つ」