五月半ば、信州市の夏はその片鱗を見せ始めていた。
結城家の庭園のような古い屋敷は、至る所に生命力が溢れていた。ピンクのバラが至る所に咲き乱れ、階下の池には蓮の葉が芽を出し、瑞々しく可愛らしく佇んでいた。片側には人の背丈を超えるバショウの木が立ち、涼を取るのに最適だった。
夏川清美は暇があれば二階のベランダに座り、揺りかごを揺らしながら日向ぼっこをするのが好きだった。
槙島秀夫はあの日以来、意外にも夏川清美に嫌がらせをしてこなかった。
夏川清美は平穏に半月を過ごし、木村久美はこの世に生を受けて三十九日目を迎えた。
結城お爺さんは暦を見て、今日は良い日だと言い、木村久美のお食い初めを行うことにした。
子供の保護のため、お食い初めと言っても、より家族での祝いに近いものだった。