第79章 彼女は悪くない

結城陽祐は自信満々に夏川清美の抱いている赤ちゃんを抱こうとした。

自分の子供なのだから、当然、面子は保たれるはずだった。

しかし……

「うわーん……」

結城陽祐が夏川清美から赤ちゃんを受け取った途端、小さな命の澄んだ泣き声が廊下中に響き渡った。

夏川清美は急いで赤ちゃんを抱き返した。

結城陽祐の端正な顔が様々な表情を見せた。

「先日、梶原先生が久美の健康診断をしたばかりですし、そう時間も経っていないので大きな問題はないはずです。今日は久美が驚いてしまったので、検査は別の日にしましょう」夏川清美は赤ちゃんを抱き直しながら、結城陽祐の琥珀色の瞳を見つめて淡々と言った。

提案のように聞こえたが、実際は強い態度だった。

彼女は医者として、久美が健康で、発育も良好なことを知っていた。昨日、結城陽祐が突然久美の健康診断を提案した時は気にも留めず、定期検査だと思っていた。