第135章 藤堂さんが育児室へ連れて行った

夏の暗い夕暮れ、夏川清美は六時半に空港に着き、ちょうど夕陽の残光が降り注ぎ、星空空港全体を金色に染め上げていた。

清美が初めて結城陽祐に出会ったあの夕暮れそのものだった。

目も眩むほど美しかった。

しかし、そんな金色の光に包まれていても、清美の心は少しも和らぐことはなかった。

頭の中は木村久美のことでいっぱいだった。

もし藤堂さんが鈴木濱の手下だとしたら、清美は彼女が久美にどんなことをするか想像もつかなかった。

緊張のあまり、清美の腹部の傷跡が疼き始め、まるでこの子のために前の持ち主が何を犠牲にしたのかを思い出させるかのようだった。

額には緊張で薄い冷や汗が浮かんでいた。

沢田浩司は表立って動けないため車から降りなかったが、林夏美が崩壊寸前の様子を見て、心の中の疑問が膨らんでいった。

「皆で彼女を手伝ってやれ」沢田は清美の後ろ姿を見つめながら、残りの二人に命じた。

「はい」

元々沢田は結城湊のことをそれほど心配していなかった。結城陽祐という化け物が手術の失敗に備えていたのだから、きっと久美とお爺さんの面倒は見ているはずだと信じていた。

たとえ陽祐さんが手術室で何かあったとしても、久美には何も起こらないはずだった。鈴木濱の言葉さえも気にしていなかった。

結局のところ、陽祐さんが自分の息子の周りにそんなバグを残すはずがない。残すとすれば何か意味があるはずで、もし意味がないなら去る前に片付けているはずだ。決して久美を危険な状況に置くことはないだろう。

しかし理性はそう言っても、林さんが久美のために必死になっている姿や、その心配そうで不安な様子を見ていると、彼も確信が持てなくなってきた。

もしかして本当に久美が危険な状況にいるのだろうか?

そう考えた沢田は結城陽祐に電話をかけたが、あちらは結城お爺さんと話を終えたばかりで、薬の影響で眠ってしまっていた。

答えが得られない沢田は健二に尋ねるしかなかった。「健二、林さんは空港に入ったが、今回の久美の移送担当は誰か知っているか?」

「野村越が若坊ちゃまの移送を担当しています。二少が先ほど帰還の手配をし、資料は清美さんに送られました」健二は急いで答えた。

沢田は「うん」と返事をし、しばらく考えてから、「あの乳母の藤堂さんも今回久美と一緒なのか?」