第170章 なぜまた生きているの?

槙島秀夫が鈴木政博に話しかけようとした時、鈴木政博が狂犬のように座席に向かって突進していくのを目にした。止める間もなく、突然誰かが叫んだ。「あれは花嫁さん?」

その声に、槙島秀夫は目を向けた。

最初は驚き、次に反射的に誰かが会場を間違えたのかと思ったが、うつむいた瞬間にまた急に顔を上げた。あれは林夏美?

同じ人物なのに、彼は危うく見分けがつかないところだった。

君陽荘園のホテルは、最も目立たない応接室でさえ、全面ガラス張りの窓で、正午の陽光が夏川清美に降り注ぎ、そのウェディングドレスの魅力が存分に引き立てられていた。

ピンクのダイヤモンドが陽光の下で輝き、夏川清美をディズニーアニメの美しい姫のように引き立てていた。艶やかな桃色の瞳は輝き、まるで海や星のようで、彼女の全ての欠点を完璧に隠していた。

「デ...デブ野郎?」槙島秀夫の衝撃に比べ、鈴木政博は恐怖を感じていた。死んだと聞いていたのに、どうして生きているんだ?それに...これは本当に林夏美、あのデブ野郎なのか?

おかしいだろう!

鈴木政博は心の中でつぶやきながら、すぐに林夏美にメッセージを送ろうとしたが、なぜか携帯の電波が入らず、何度送信を試みても失敗した。

入口からゆっくりと入ってくる林夏美を見て、すぐ近くにいる雲さんを見て、鈴木政博は歯を食いしばって階下に向かおうとした。

林夏美が婚約式の会場に来たからには、雲さんはもう大きな用はない。家の件については、林富岡が追及するだろう。今は夏美ちゃんにデブ野郎が現れたことを知らせなければならない。

しかし鈴木政博が出ようとした時、数人の給仕らしき人々に案内された。「婚約式がまもなく始まります。こちらにお座りください。」

「急用が...姉さん!」鈴木政博は言いかけたところで、鈴木末子が林富岡の腕を組んで近づいてくるのを見て、すぐに迎えに行った。

鈴木末子は結城お爺さんの使いの者に連れてこられた。意図は明確で、二つの家族が吉時をずらし、同じホテルで予約したのは、林富岡夫妻が両方の婚約式に出席できるようにするため、どちらも疎かにしないためだった。