第250章 シンデレラにも春が来る

結城陽祐が病院の玄関で一周散歩したことで、彼の危篤状態についての噂は自然と消えていった。

株主たちの不安も落ち着いたが、野村黒澤側の弁明記事がまだ出ていないうちに、ネット上で『これは本物のシンデレラストーリー』という記事が話題になった。

そして副題には「驚かないで、これは正陽様と林夏美の話」とあった。

記事はまず、林夏美が第三者として暴行を受けた件から始まった。

そして夏川清美の2着のウェディングドレスを取り上げ、比較写真を掲載した。

同じ夏川清美なのに、2着のドレスは、まるで異なる人生を象徴しているかのようだった。

槙島家が用意したドレスは粗末で安っぽく、サイズも合っていなかったが、結城様が夏川清美のために用意したドレスは豪華で美しく、夏川清美の良さを全て引き立てていた。さらに驚くべきことに、スカート部分にはピンクダイヤモンドが5,200個も使われており、その意味するところは明白だった。

これが急遽用意されたものであるはずがない。婚約式で花嫁の取り替えなどなく、全ては誤解だったことの間接的な証明だった。

美しい誤解。それは、一人のぽっちゃり女性の劣等感から始まった。

筆者は大胆に推測する。正陽様が求婚に来たとき、自然と自分の子供を産んでくれた林夏美が花嫁になると考えていた。

しかし林家は、正陽様が求婚したのは彼らの美しい継娘だと思い込んでいた。

その美しい継娘は、林夏美が自分の夢の邪魔をすることを恐れ、必死に夏川清美を槙島家に押しつけ、同じ日の同じホテルを選んで、夏川清美の正陽様への想いを完全に断ち切ろうとした。そうすれば、彼女が巣を奪い、野鳥から鳳凰へと変われると思ったのだ。

記事の中には、林夏美の継母と継姉が幼い頃から夏川清美を虐げていた事実も織り交ぜられており、これによって林夏美がネットユーザーが言うような、わがままで横柄で甘やかされて育った太った人間ではないことを証明していた。

彼女は継母ができたことで、父親までも失った可哀想な虫けらだった。

そしてこの可哀想な虫けらを唯一愛していた正陽様は、体調が悪く入院していたため、林家の策略に気付かず、手術が失敗しても婚約式に参加しようとし、会場で自分の花嫁が違うことに気付き、怒りに任せて槙島家の婚約式に駆けつけ、本当の花嫁である林夏美を見つけ出したのだ。