「産後検診の予約を入れておいたから、明朝、健二が連れて行くわ」
「ああ」結城陽祐はお爺さんの言葉を無視して、夏川清美の方を向いて言った。夏川清美は不思議そうに「ああ」と返事をした。産後検診はもう済んでいるのに、この男はなぜまた予約を?
「文句があるのか?私をフィットネストレーナーにしたいなら、私の指示に従わなければならない」結城陽祐は強引に言った。
夏川清美は心の中で嫌がった。いつあなたをトレーナーにしてほしいと言ったの?それに高いって言ってたじゃない?
「私、お金ないんです」夏川清美は真剣な表情で言った。
結城陽祐「……手術代の支払いだ」
「でも……」彼女は彼に林夏美と結婚しないように求めた。最初は承諾しなかったものの、最終的に目的は達成されたので、これで清算されたはずでは?
「食事中は黙って」そう言うと、結城陽祐は優雅に食事を続けた。
結城お爺さんは孫を意地悪そうに見て、首を振った。ツンデレめ、やっぱり佐藤清美のことを気にかけているじゃないか。
夏川清美は何とも言えない様子で肩をすくめた。まあいいか、無料なら。
朝食後。
夏川清美は育児室に戻り、まず木村久美にミルクを与え、それからヨガマットを広げた。
彼の計画通りに、以前の練習時間を30分増やした。
藤堂さんが傍らで見ていて、「清美ちゃん、ダイエットするの?」
夏川清美は頷いて、立ち上がって額の薄い汗を拭った。この体は本当にひどい状態で、少しの運動でもすぐに疲れてしまう。
木村久美はママが何をしているのか分からず、好奇心いっぱいの大きな目で見つめ、手には歯固めのおもちゃを握って噛んでいた。ソファーに寝そべった小さな足も落ち着かず、バタバタと動かしていた。
「産後3ヶ月だから、慎重にね」藤堂さんは経験者として夏川清美に注意を促した。
「大丈夫です、分かってます」夏川清美は笑顔で答え、ヨガマットに座って楽しそうに遊ぶ木村久美をあやした。
ママの注目を集めた小さな赤ちゃんは更に嬉しそうになり、歯固めを投げ捨てて、自分の親指をチュパチュパと音を立てて吸い始めた。
夏川清美は楽しくて仕方がなかった。「指はそんなに美味しい?ママも味見していい?」
そう言いながら夏川清美は赤ちゃんのもう片方の小さな手を取り、自分の口に入れるふりをした。