第305章 制御を失った鈴木末子

林夏美は鈴木の母娘の反応を見逃さず、淡々と微笑んで、「皆様すでにお知らせを受け取っていると思いますが、本日から富康製薬は私が…」

一瞬間を置いて夏川清美は続けた。「林夏美が最高責任者として、つまり富康製薬の新しい取締役会長として就任します。」

言い終わると、夏川清美は淡々と全員を見渡し、林富岡の怒りに満ちた顔に目を留めて、微笑んで言った。「この数年間、富康製薬は下り坂を続けており、赤字すれすれの状態だと承知しています。三つの医薬品特許だけで何とか持ちこたえている状況です。私の理解が間違っていなければ、皆様は三年間賞与を受け取っておらず、三ヶ月分の給与もやっと昨日支払われたのではないでしょうか?」

この言葉が終わると、会議室にはようやくまばらな議論の声が上がった。

夏川清美は気にする様子もなく、ますます怒りを増す林富岡を見つめながら、「これら全ての原因は、他でもない、前取締役会長の林富岡氏にあります。」

「お前!不孝者め、私の株を騙し取っておいて、よくも私のことを言えたものだ!」林富岡は怒りを抑えきれず、立ち上がって夏川清美を非難した。

「ほう、騙し取った?私たちは正規の契約を交わし、会社に五千万を投資して株式を取得したのですが、どうしてそれが騙し取ることになるのでしょう?林社長、発言には証拠が必要です。それに、経営の失敗については、あなた自身が誰よりもよくご存知のはずです。」夏川清美は的確に指摘した。

林富岡は怒りのあまり、血を吐きそうになった。一方、会社の幹部や技術者たちは、もはや議論を抑えきれなくなった。特に昨日夏川清美の恩恵を受けた者たちは。

彼らは資金注入が林社長からではなく、この地味な林さんからのものだったとは思いもよらなかった。以前の未払い給与も彼女が支払ったと知り、夏川清美に対する印象は大きく改善された。

夏川清美は皆の反応に満足し、手で静かにするよう示してから、鈴木の母娘に目を向けた。「林夫人、会社の財務報告書によると、あなたは五年前から会社の会計を管理されていましたね。会社の会計状況はよくご存知のはずですが?」

鈴木末子は林夏美が何をしようとしているのか分からず、警戒しながら頷いた。これは否定しても無駄な事実だった。

「そうですか。」夏川清美は口元を歪め、野村黒澤を見た。