「一億円で手術用メスセット?気が狂ったのか?」
司会者だけでなく、会場の人々も藤原悠真が狂ったと思った。
誰が一億円も出して死人が使っていた手術用メスを買うのか?たとえその人が天才だったとしても!
結城陽祐は眉をひそめ、横を向くとぽっちゃりくんが感動と衝撃に満ちた表情をしているのが見えた。あの男が他人のメスに一億円も出すのに、彼女が感動するなんてバカげている。
最後列に座っていた藤原悠真は結城陽祐に申し訳なさそうに頷いた。このメスセットは夏川ちゃんが世に残した最後の遺品だった。夏川お爺さんが怒って手放してしまったが、彼にはそんなことはできなかった。
夏川ちゃんは一生を病院と患者に捧げ、他の面での痕跡は薄かった。このメスセットだけが長年彼女に寄り添い、愛用の品であり、最も大切にしていたものだった。どうして他人に譲れようか?