夏川清美はまだ結城陽祐が世界で一番美しい人だと感心していて、全く心を痛めている様子はなかった。
しかし結城陽祐は他人が自分のぽっちゃりくんのことを言うのが気に入らず、「目が見えないなら治療に行けばいい。人の目を傷つけるような姿を見せるな」と言った。
結城和也は結城陽祐が自分を非難するとは思っていなかった。この妖怪が人の目が見えないなどと言う資格があるのか、自分が選んだデブ野郎がどれほど奇妙か見てみろ、と怒りで立ち上がりそうになった。
「そうだね坊や、こんな大きなピンクダイヤモンド、お小遣いで足りるの?それに、あなたの連れの女性が他人の婚約者だって知ってる?今時の子は本当に変わった趣味してるね。男の略奪愛も略奪愛、捕まったら父親に足を折られるよ」と沢田浩司は結城和也の近くで意味深げに言った。
結城和也「……」くそっ!
「ああ、それと兄さんにも気をつけないとね。彼は性格が悪いから」沢田浩司は結城和也が金持ちの若旦那の面目を保てなくなりそうなのを見て、ゆっくりと付け加えた。
結城和也は震え、思わず結城陽祐の方を見た。
前の結城陽祐は沢田浩司の言葉を聞いていないかのように、誰かがピンクダイヤモンドに値をつけるのを見てゆっくりと競り札を上げた。
司会者は笑顔で「6000万円、一度目!他にありますか?」
結城和也は先ほどの刺激で動揺していたが、結城陽祐が札を上げるのを見て、即座に値を上げた。
「6500万円、一度目!」司会者は大声で叫んだ。
「7000万円!」
結城和也は諦めず、「7500万円!」
前の結城陽祐は眉をひそめ、「1億円」
夏川清美は驚いて、そのピンクダイヤモンドを見つめた。このピンクダイヤモンドは確かに素晴らしいが、1億円もの価値があるとは思えない。
ステージ上の司会者は驚いて唾を飲み込み、「1億円、一度目、1億円、二度目、他にありますか?」
林明里は目が赤くなるほど驚いた。結城陽祐がこのデブ野郎の夏川清美にこれほど気前が良いとは思わなかった。1億円だよ、100万円でも1000万円でもない、1億円なんだ!
以前、結城和也が彼女に2億円を提示した時は、あまりの衝撃に言葉を失い、自分が最高に裕福な人間になったと感じた。しかし今、2億円というのは、本当の金持ちにとっては手を振るだけの些細な動作なのかもしれないと気づいた。