車を降りて、夏川清美は医学部の門の前に立ち、少し戸惑いを感じていた。
前世で学生だった時から六年が経ち、今の気持ちは全く違っていた。
あの時は足を失い、一人で飛行機に乗り、表面的には輝かしく見えたが、実際は途方に暮れていた。
今は普通の人々の中に溶け込んでいるが、心は穏やかで落ち着いている。
今日は入学手続きの最終日で、早めに到着したものの、学校はすでに大変賑わっていた。
四人は、ごく普通の家族のように見え、学校内を目立たずに歩いていた。健二は力持ちで二つのスーツケースを運んでいた。
まず女子寮に向かい、健二と結城叔父さんは男性のため寮には入れず、荷物を置いてから他の入学手続きを済ませに行った。
夏川清美と雲さんが入ると、他の三つのベッドはすでに埋まっており、入口近くのベッドしか空いていなかった。雲さんは心配そうに「清美、どうしましょう。ドアを開けると風が入ってきて、風邪を引いたらどうしよう」と言った。
「お嬢様でもないのに、風くらいで風邪を引くの?それに、あの体型で、そんなに繊細なわけないでしょ?」雲さんの言葉が終わるか終わらないかのうちに、化粧の綺麗な可愛らしい女の子が洗面所から出てきた。その言葉は明らかに意地悪に聞こえた。
夏川清美が眉をひそめ、何か言おうとした時、別のベッドから誰かが起き上がり、先ほどの女の子に向かって「他人の体型なんてあなたに関係ないでしょ。太っているからって繊細じゃないなんて誰が決めたの?」と言い放った。
そして夏川清美たちの方を向き、「私は鈴木真琴よ。あなたのルームメイト。ベッドを替わる?」と言った。
夏川清美は「いいえ、結構です。ありがとう」と答えた。
女の子はそれを聞くと布団をかぶって、また横になった。
その場の雰囲気は妙に気まずくなった。
雲さんは心配そうに「清美、やっぱり寮に住むのは止めましょうか...」と言った。
「大丈夫です」夏川清美は手を振り、布団をかぶって寝続ける鈴木真琴の方を見て、「私は林夏美です。新しいルームメイトです」と言った。
「ちっ」神崎裕美はベッドの鈴木真琴を睨みつけ、夏川清美に向かって舌打ちをして、寮を出て行った。
夏川清美は穏やかに微笑み、雲さんにベッドを整えてもらい、余計な心配はしないようにと言った。