第468章 恋の喜びを分かち合いたかった女

夏川清美は教室に駆け込んで、ちょうど授業が始まるところだった。

岡田千明は急いで教科書を彼女に渡した。

今日は彼らの今学期最初の解剖学の授業だった。

つまり、加藤迅の授業だ。

夏川清美が到着したばかりのところに、加藤迅が入ってきた。白衣は着ていなかったが、目の前の人物からは清楚な儒雅な雰囲気が漂っていた。さらに際立つ容姿も相まって、多くの女子学生は一目見ただけで魅了されてしまった。

しかし、これらの夢見心地の女子たちは、加藤迅が微笑みながらウサギの解剖を実演するのを目の当たりにすると、一人また一人と顔色が青ざめ、唇が紫色になっていった。

中には既に吐き始める者もいた。

実演を終えた加藤迅は目を上げて教室全体を見渡し、「これから5人一組になって、実験動物を選び、解剖を行い、データを記録してください。皆さんの実験は全て期末成績に反映されます。この専門を選んだ以上、その血なまぐささと慈悲を受け入れなければなりません。もちろん、受け入れられない人は今すぐ退出してもかまいません。医学は他の専門とは違い、生死と希望に関わることです。慎重に考えてください」と言った。

加藤迅の声は大きくなく、いつもの通り穏やかだったが、力強さに満ちていて、さっきまでざわついていた教室が急に静まり返った。

夏川清美は壇上の人物を横目で見た。どの面から見ても、彼女の先輩は非常に優秀で魅力的な人物で、結城家三家と協力するなんて信じられなかった。

ため息をつくと、夏川清美は自分の周りに鈴木真琴の他に三人の人物がいることに気付いた。

「あなたたち、何してるの?」夏川清美は二人の男子学生と、さっき大物に頼ろうと言っていた岡田千明を見た。

「はは、僕たちは他のグループに入れてもらえなかったんです」黒川花音は気まずそうに説明した。

彼が言い終わると、服部信繁が白い歯を見せて「ははは、僕も断られました」と言った。

岡田千明は、他の人たちなんて全然興味ないという態度を見せた。

夏川清美は鈴木真琴を見て、「あなたも断られたの?」と聞いた。

「私は留学生だから、孤立されるのは当然です」鈴木真琴は理にかなった分析をしているように見えた。

「じゃあ私は?私は孤立されてないはずでしょ?」そう言って夏川清美は他のグループを見渡すと、みんなが彼らから遠く離れてウサギを選んでいるのに気付いた。