第470章 お爺ちゃん、彼を怒らないで

夏川清美は叫んだ後、上下階からの視線を感じ、先ほど興奮しすぎたことに気づいた。

少し恥ずかしそうに咳払いをすると、結城陽祐がすでに「健二、夏川お爺さんを警備室から案内してくれ」と言っていた。

「夏川お爺さん?」健二は困惑した。夏川お爺さんがなぜ警備室にいるのか分からなかったが、次の瞬間、先ほどの警備室からの報告内容を思い出した。気性が荒く頑固で、彼らを散々叱りつけたという。その時恥ずかしくなった。あの人が夏川お爺さんでなければ誰だというのか。「すぐに迎えに行きます」

「私が行きます」夏川清美は考えた末、お爺さんの性格では健二では対応できないかもしれないと思った。

「一緒に行こう」結城陽祐は自分のぽっちゃりくんがあの意地悪なお爺さんにいじめられ続けるのを望まなかった。

「うん」夏川清美は頷いた。

これまで夏川清美は感情の問題は自然の成り行きに任せればいいと思っていた。それに彼女と結城陽祐はすでに婚約しており、結婚も水が流れるように自然な出来事になるはずだった。

しかし心の奥底で、夏川清美は実は結城陽祐への感情に不確かさを感じていた。

相手が自分との婚約・結婚を決めた理由にも疑問を持っていたが、昨日関係を確認してから、突然心が落ち着き、男性に自分の転生の話をしたくなった。

お爺さんのことは、その話を切り出すいい機会かもしれない。

だから結城陽祐が一緒に行くと言った時、夏川清美は断らなかった。

庭園は広く、専用の乗り物があり、結城陽祐と夏川清美はそれに乗って警備室まで行った。

近づく前からお爺さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

「散歩だと言っているだろう!お前たちは山賊か?法治社会で人が自由に歩けないのか?ここを歩きたいんだ、これからも毎日ここを歩くぞ、お前たち小僧どもに何が言える!」お爺さんの声は特に元気いっぱいに聞こえた。

「申し訳ありません、お爺さん。ここは私有地なので、自由に歩き回ることはできません」担当の警備隊長は怒りを抑えて説明した。

「私有地だと?こんな広い場所が私有地だと?何か証拠があるのか?」お爺さんは理不尽に問いただした。

「お年寄りなので大目に見ていますが、すぐに立ち去っていただかないと、私たちは…」