第474章 あなたの手に持っているのは何?

結城陽祐は夏川清美が自責の念に駆られないようにと思い、この件について夏川清美に責任はないと考えていた。

話題を上手く変えられたところで、夏川清美は突然あることを思い出した。「どうしてこの方向に調べが及んだの?あの薬剤がすでに競技の場で使用されているからなの?」

「林夏美のことを覚えている?彼女の足に問題が起きたのに、その後二度も何事もなかったかのように現れた。一度は婚約式で、もう一度はチャリティーオークションの夜会でね。私は彼女が禁止薬物を注射したのではないかと疑い、偶然にも薬物の出所を突き止めた。それが研究室の研究員が私的に販売していたものだったんだ」結城陽祐は当時単なる疑いだったが、まさかこれほど多くのことが発覚するとは思っていなかった。

「それなら、売られたのは半製品だったはずよ」夏川清美はしばらく考えてから答えた。もし彼女の配合した薬剤なら、あれほどの副作用は出るはずがない。

チャリティー晩餐会で林夏美の足を見たとき、禁止薬品を使用したのではないかと疑ったが、まさかその薬品が誠愛病院の研究室から流出したものだとは思いもよらなかった。

一瞬、複雑な感情が湧き上がった。

そして頭に閃きが走り、桃色の瞳が急に見開かれた。「もしかして...彼らは薬の配合比を知らなかったのかもしれない?」

林夏美の出来事から、夏川清美は薬の配合比に問題があったのではないかと考えた。それが林夏美の神経死を引き起こした原因かもしれない。しかしすぐに首を振った。そんなはずはない、配合法は先輩に渡してあったのだから。

結城陽祐は夏川清美の表情の変化を見ながら考えた。「配合比を知らなかったというより、夏川先生が残した配合では競技に求められる効果が得られなかったため、新しい実験を行い、林夏美が偶然その実験台になってしまったのかもしれない」

夏川清美は信じられない様子で男を見つめた。

「誠愛病院でこの期間、林夏美のような例が他にないか調べさせよう」結城陽祐は自分の推測の方が彼らの利害に合っているはずだと考えた。

夏川清美は少し考えてから、「あなたの言った競技の中で、突然優勝して、その後体に問題が出た人がいないかも調べてみて」

もしいれば、何か手がかりが見つかるかもしれない。

ただ、その背後にいる人物が先輩かもしれないと考えると、夏川清美の心は複雑な思いで一杯になった。