第573章 お前こそ本当の手こずり屋だ

加藤迅は自分の耳を疑った。

彼は呆然と夏川清美を見つめ、しばらくしてから恐る恐る、不確かな様子で尋ねた。「清美ちゃん、本当なの？」

夏川清美は先輩のこの慎重な様子を見て、胸が痛んだ。かつて自分が密かに彼を好きだった時の卑屈な気持ちを知っているだけに、先輩にも同じ思いをさせたくなかった。

人は前を向いて生きていかなければならない。彼女は先輩を何年も好きでいた。二人が一緒になれることは最高の幸運だった。大切にしなければならない。

「うん」心の準備ができていた夏川清美は、はっきりと答えた。

加藤迅は嬉しかった。清美ちゃんがどんな理由で承諾してくれたにせよ、一度承諾した以上、後悔させる機会は与えないつもりだった。熱い視線で夏川清美を見つめながら、「僕たちは島で2ヶ月過ごしたけど、ボブとカニも君に会いたがってるはずだよ」

夏川清美は思わず笑った。「本当にボブとカニが私に会いたがってるの？それとも、あなたが早く結婚式を挙げたいだけ？」

「両方さ」加藤迅も否定しなかった。

「あはははは」夏川清美は記憶の中の先輩とは全く違う姿を見て、思わず大笑いし、しばらくしてから頷いた。「いいわ」

「じゃあ、3日後に出発することにしよう？」加藤迅は夏川清美の意見を求めた。

夏川清美は頷き、数日後の出発に特に異議はなかった。

加藤迅はそれを見て、端正な顔に抑えきれない喜びを浮かべた。

このような先輩の姿を見て、もともとは先輩を悲しませたくないという思いだけで、結婚式に特に期待していなかった夏川清美も、この結婚式に少しばかりの期待を抱くようになった。

……

エディンバラ。

2月のY国の気温は5度から8度で、とても暖かいとは言えなかった。

結城陽祐は悪夢のような飛行を経験した後、木村久美を連れてエディンバラに到着した。機内で大騒ぎを起こした小さな子供も、今はようやく落ち着いていた。

彼もようやく一息つき、年配で飛行機酔いで疲れた様子の雲さんを見て、「雲おばさん、先に休んでください。こちらで久美の面倒を見る人がいますから」

「陽祐さんは？」雲さんは心配そうに結城陽祐を見た。飛行機の中で一番疲れたのは二少のはずだった。