ダニエルの言葉に夏川清美の体が一瞬止まった。
結城陽祐は不機嫌そうに振り返り、ダニエルを冷ややかに睨みつけた。
しかしダニエルは少しも引き下がらず、じっと夏川清美を見つめ続けた。
夏川清美は深いため息をつき、真剣な表情のダニエルをちらりと見て、「あの人は私のことを覚えていないのに、私が何を責められるというの?」
「姉さん!」ダニエルは興奮して姉さんと叫んだ。
夏川清美は慌てて手を振り、「やめて、私はまだ19歳よ。あなたみたいな弟なんていないわ」
「じゃあ、僕のことをお兄さんと呼んでくれたら、なつき信託を全部あげるよ!」ダニエルは嬉しそうに言った。なつき信託は元々母が設立した会社だから、姉にあげるのは当然のことだと。
「出てけ!」ダニエルの言葉が終わるや否や、結城陽祐は容赦なく追い払った。