お爺さんは常盤巧のカウンセリングルームに行き、心理テストを受けた後、出てきた時の表情は良くなかった。
自分に心の病があるかどうかは気にしていなかったが、娘のことが心配だった。
自分のせいで、娘の人生が悲劇になってしまったのだ。
夏川弥生に対してますます自責の念に駆られていた。
ダニエルは、お爺さんが心理医に相談して問題がどこにあるのかを知り、心理的なケアを受けることで、お爺さん自身にも母にもいいと思っていたが、お爺さんはまた考えすぎてしまった。
一晩中、お年寄りは黙り込んでいて、ダニエルは心配のあまり夏川清美に電話をせざるを得なかった。
夏川清美はそれを聞いて、しばらく黙っていた後、「心配しないで、お爺さんを一人にしておきましょう」と言った。
彼女は夏川弥生とお爺さんの会話を聞いていたので、母の件が長年お爺さんの心に重くのしかかっていることを理解していた。彼ら自身が納得しない限り、どれだけ言っても無駄だった。
ダニエルはそれを聞いて、頑固な小さなお爺さんを見つめた後、静かに退室した。
翌日、夏川弥生は夏川清美が予想した時間に目を覚ました。
「ママ、どこか具合が悪いところはありませんか?」ダニエルは母が目を覚ましたのを見て、急いで前に出た。
夏川弥生は指を軽く動かしただけで、胸に耐えられない痛みを感じ、少し茫然と息子を見つめて、「私...どうしたの?」と尋ねた。
「昨日突然気を失われて、医師が緊急手術を行わざるを得なかったんです。でも、すべてうまくいきました」ダニエルは母の手を握りしめた。彼は本当に母が乗り越えられるか心配だった。
「手術を受けたの?」夏川弥生は、ずっと躊躇していた手術がこのように終わり、しかも成功したことに明らかに驚いていた。
「申し訳ありません、母さん。でも、あなたに何かあるのを見過ごすことはできませんでした」ダニエルは目に謝罪の色を浮かべながらも、自分の決定に後悔の色は全くなかった。
夏川弥生は目を閉じて開き、「わかってる...」と言った。
彼女の以前の行動自体が、とても自己中心的な決定だった。
ただし、ここまで話して、無意識に病室の他の場所を見渡すと、医師以外に誰もいなかった。
父も夏川清美もいなかった。
手術を終えたばかりの蒼白い顔に、思わず寂しさが染み出た。