第693章 笑いたくないなら笑わなくていい

夏川清美は翌日、結城陽祐が退院したことを知り、顔色が特に悪かった。

心の中で答えはうっすらと分かっていたが、彼女は本当に納得できず、病床に横たわったまま憂鬱な気分で、夜には退院手続きを済ませてしまった。

藤原悠真は彼女を月ヶ池邸まで送り届けても、まだ心配そうだった。「本当に大丈夫？」

「私は医者だから、どうすればいいか分かってるわ」夏川清美は無理に笑顔を作った。

藤原悠真は彼女のわざと膨らませた頬をつついた。「笑いたくないなら無理に笑わなくていい。醜いよ。私の番号を登録しておいたから、何かあったらすぐに電話してくれ、分かった？」

「うん、うん」夏川清美は激しく頷いたが、心の中には申し訳なさがあった。この数日間、悠真兄さんは彼女のために奔走してくれたのに、彼女は気持ちが上手く整理できず、お互いを認め合ってからもちゃんと話せていなかった。