第691章 私と別れるの?

夏川清美は「分からない」と言い終わると、病室は針が落ちるほど静かになった。

健二は息を止めていた。

結城陽祐は拳を強く握りしめ、「清美、彼女が何でもやれることは分かっただろう」

「怖くないわ」夏川清美の返事には一切の躊躇いがなかった。

その三文字で結城陽祐の心の準備は崩れかけたが、最後の瞬間に何とか抑えた。もし福田美沙紀と三房だけなら、緊張はするものの、及び腰になるほど恐れることはない。

しかし結城清は違う。

結城家本家との確執は根深く、祖父の代から続いていた。その後、祖父が本家を本流から外したが、様々な妨害に遭い、この争いは彼が結城家の伯父と結城武を刑務所に送り、結城清が不慮の事故で障害者になるまで続いた。

その後、結城清は京都を離れ、ずっとフランスに住んでいたが、十年の潜伏の末に突然帰国したのは、結城武親子の出所と関係があるはずだ。