第702章 不機嫌な正陽様

車に乗り込むと、野村黒澤は少し慎重に尋ねた。「直樹様は信頼できますか?クロフト家が清様を当主にさせたからには、引きずり下ろすのは容易ではないでしょう」

「彼の実力次第だ。神木彰に彼を監視させ、適宜支援するように」結城陽祐はそう答えると、携帯を開いて下を向いた。

野村黒澤は眉をひくつかせた。また何かを見ているのか?

彼は好奇心を抑えられず、正陽様が一体何を見ているのか知りたくて、思わず体を真っ直ぐにして、もっと真っ直ぐにした。そして、ついに正陽様の携帯に何の宝物が隠されているのかを見ようとした瞬間、驚くほど美しい琥珀色の瞳と目が合い、すぐに怖気づいて後ろに引いた。「正陽様...正陽様、まだ報告することがあります」

「言え」結城陽祐は視線を戻し、冷たく硬い声でその一言を投げた。