第705章 清美が他人とダンスするのを見る

結城清の就任挨拶は、先ほど結城陽祐の前で見せた演技と同様に、完璧で一切の隙がなく、まるで本当に普通の就任式であるかのようだった。

しかし、10年前の結城家の秘密を少しでも耳にしたことがある人々は、そうは思えなかった。

結城家の本家の父子が間もなく出所し、次男の結城清が突然帰国して、結城財閥のライバル企業である永盛製薬の社長に就任したこと。この中に潜む火薬の匂いは、少し嗅ぐだけですぐに分かるものだった。

今日のこの太平の世の様子は、おそらく外部の人間に見せるためだけのものだろう。

結城陽祐は今日の出席者を見回した。企業家たちの他にも政界の要人や著名人が来ていた。わずか数日で結城清は本当に手腕を発揮したようだ。

今日、結城清が彼を招待したというよりも、正式に挑戦状を叩きつけたといった方が良いだろう。