五月の京都は雨が降ったばかりで、夜風は少し冷たかった。
夏川清美は薬箱を手に立ち尽くし、スカートの裾が風に揺れる中、結城陽祐の問いが耳の中で繰り返し響いていた。
君は毎回死の淵から生還するたび、僕がどんな気持ちになるか分かるのか?
彼女は彼ではないが、彼の気持ちを理解していた。
先ほど彼の腹部の銃創を見たとき、心臓が思わず締め付けられ、突然湧き上がる不安と恐怖は、今もなお後悔の念を残していた。
彼女はその傷がもう少し上だったらどんな結果になっていたか、考えることさえ恐ろしかった。
結城陽祐の言う通り、彼女は怖かった。
必死に抑えようとしていたが、先ほど傷を見た瞬間の衝撃と恐怖は隠しようがなかった。
しかしそれが最も彼女を不安にさせるものではなかった。彼女が最も恐れていたのは、これから彼が同じような危険に遭遇することだった。