第749章 来而不往は礼に非ず

結城陽祐がバスルームから出てくると、携帯電話が絶え間なく振動していた。見ると知らない番号だったが、誰からかはおおよそ見当がついたので、通話ボタンを押した。

「結城陽祐、やっと私の電話に出たわね。一体どういうつもり?」福田美沙紀はここ数日、結城陽祐と連絡が取れず、爆発寸前の状態だった。息子に弄ばれたような屈辱感を感じていた。

「ああ、あなたからの電話だと分かっていたら、出なかったでしょうね」結城陽祐は面倒くさそうに返事をし、パンと電話を切った。

彼が切るとすぐに別の番号から電話がかかってきた。結城陽祐は出て、「話せ」と言った。

「申し訳ありません、二少。奥様が大変取り乱されて、デリバリーの人から携帯を奪いました」福田美沙紀側の警備隊長が恐る恐る報告した。

「明日、屋敷に送り返せ」結城陽祐は考えた。福田美沙紀がずっとホテルに滞在するのも問題だ。メディアに何か捉えられでもしたら、また何か面倒なことになるだろう。それなら屋敷に送り返して、お爺さんに見ていてもらった方がいい。