雲さんは不思議そうに階段の入り口まで歩いていくと、最近は閑散としていたリビングに突然何人もの人が立っているのが見えた。その中の一人は都林市に残っていた夏川お爺さんだった。
自分の目を疑いながら、雲さんは目を細めて見つめた。確かにお爺さんだった。そしてお爺さんの隣には背の高い美しい混血の外国人が立っていた。彼女は都林市の病院で見かけたことがあり、夏川お爺さんの外孫のようだった。そうなると、彼が押している車椅子に座っているのは、夏川お爺さんの長年行方不明だった娘に違いない。
都林市では雲さんは夏川弥生に会ったことがなかったが、お爺さんが都林市に残った理由は知っていた。すぐに嬉しそうに小走りで戻り、「清美、夏川お爺さんが戻ってきたわ。娘さんと外孫も一緒よ。早く身支度して木村久美を連れて下に降りなさい」と言った。