第55章 他人の知らないことを言わなきゃね

その言葉を聞いて、土屋遥は罵りたい衝動を抑え、冷ややかな目つきで灰原優歌を横目で見た。

この人のせいじゃなければ、毎日授業中に罰書きを書いて、昨日ついに罰書きを書き終えたなんて。

昨夜徹夜で書く必要もなかったのに。

そう考えると、土屋遥は灰原優歌のことがますます読めなくなった。

素直だと言えば、生活指導主任の前で森谷美貴の机を蹴り倒し、川瀬成俊を病院送りにした。

反抗的だと言えば、物理の先生の罰書きを真面目に丁寧に書いている……

「灰原さん、最近……なんだか綺麗になったね」

後ろからの声を聞いて、土屋遥は眉をひそめた。

佐藤知行がこんなに口が上手いとは知らなかった。

しかし。

いらいらしながら振り向いた時、女の子の横顔と目が合い、思わず見とれてしまった。

以前から、新しい隣の席の子が綺麗だということは知っていた。