第85章 柴田お嬢様の身分

ただ。

灰原優歌の身分を考えると、生活指導主任は我慢して、ただ嫌悪感を込めて灰原優歌を一瞥し、その後冷たい表情で立ち去った。

なるほど、こんな年齢になってから柴田家に引き取られたわけだ。きっと、柴田家もこんな人間を恥ずかしく思っているのだろう!

学校中の人が柴田裕香は白富美で、成績優秀だということを知っていた。一方、灰原優歌は川瀬成俊を怪我させた件で、あっという間に知られることとなった。

そのため永徳高校では、ほとんどの人が柴田裕香と灰原優歌は雲泥の差があると思っていた。

生活指導主任が去って間もなく、灰原優歌は帽子を取り、参考書を開いた。その中にはiPadが挟まれていた。

「灰原さん、寝るんじゃなかったの?」佐藤知行は灰原優歌が目を覚ましたのを見て、思わず尋ねた。

「眠れない」灰原優歌は答えた。

佐藤知行はすぐに理解した。灰原優歌はただ生活指導主任に会いたくなかっただけだ。

……

一時限目が終わると。

みんなは土屋遥が戻ってきたのを見て、様々な思いを抱き、多くの人が灰原優歌を見て密かに喜んでいた。

誰もが知っている、土屋遥は柴田裕香のことが好きだということを!

他の人は柴田家のことや、灰原優歌のこれまでの行動を考慮して、灰原優歌と衝突することを恐れていた。しかし土屋遥は違う。

このとき。

全員の視線が、思わず土屋遥と灰原優歌に向けられた。佐藤知行も緊張し始めた。

彼らは土屋遥が無表情で灰原優歌の前まで歩いていくのを見た。

「宿題終わった?ちょっと写させて」土屋遥は寝起きのような、少し低い声で言った。

「他の人のを写ればいいじゃない?」

灰原優歌は眉をひそめた。

土屋遥は当然のように答えた。「同じくらいのレベルの人のを写った方が自然だから」

「……」

灰原優歌は宿題を彼の机に投げ、それ以上何も言わなかった。

しかし。

この光景を見て、他の人々は呆然とした!

土屋遥は灰原優歌に嫌がらせをするどころか、むしろ仲が良さそうじゃないか!??

以前灰原優歌に嫌がらせをした森谷美貴は、我慢できずに口を開いた。声は尖っていた。「遥、彼女がどういう身分か知らないの?」

以前は、土屋遥は柴田裕香を一番守っていた。なのに今は、灰原優歌が柴田裕香のものを奪ったことを全く気にしていない!