灰原優歌はまだ何も言わなかった。
佐藤知行は反論した。「灰原さんのお兄さんは、とてもイケメンですよ!」
「柴田裕也のことか?」と土屋遥が尋ねた。
佐藤知行は首を振って、「優歌とは...似てないけど、でも本当に僕が見た中で一番イケメンだよ」
「……」
土屋遥は黙ったまま、薬を塗る手の動きが強くなり、佐藤知行は思わず悲鳴を上げた。
「痛い痛い、優しくして……」
周りの生徒たちは、この会話を聞いて、もはやこの二人の男子を見ていられなかった。
ただ灰原優歌だけが佐藤知行に賞賛のまなざしを向けた。
灰原優歌は頬杖をつきながら、にこやかに言った。「うちのお兄さんは、確かにイケメンよ」
一目見た瞬間から、彼女の理想のタイプだった。
……
放課後。
車内で、柴田裕香は柴田の母の腕にすがりついて甘えた。「ママ、お兄ちゃんにあの投稿のことを追及しないでって言えない?……」