第146章 灰原優歌は何も影響を受けていない

「お嬢様、院長はどちらにいらっしゃいますか」

このような微妙な時期に、看護師は灰原優歌に対して警戒心を抱いていた。

「院長をお探しのようですが、何かご用件でしょうか?」

その言葉を聞いて、灰原優歌は突然笑みを浮かべ、片手で顎を支えながら、美しい目尻を上げた。

「お姉さん、私が悪い人だと思っているの?」

一瞬、看護師は心を奪われたような気がした。

彼女が反応する前に、灰原優歌は手を伸ばし、人差し指で看護師の手の甲に優しく円を描きながら、澄んだ魅力的な目で「お姉さん、私、悪さはしないわ」と言った。

「院長は4階にいらっしゃいますが、いつも忙しいので、お姉さんが叱られないようにしてくださいね」

看護師は心が和らぎ、諦めたように言った。

「ありがとう、お姉さん」

灰原優歌は唇の端を上げ、どこからか突然現れたミルクキャンディーを看護師の手のひらに優しく置いて、中へ歩いていった。

……

院長室。

灰原優歌はノックをしてから、そのまま入室した。

「あなたは誰ですか?」

院長は顔を上げ、医療スタッフではないことに気づき、眉をひそめた。

「柴田大旦那は私の祖父です」灰原優歌はゆっくりと言った。

それを聞いて、院長の眉間の皺が少し緩み、口調も柔らかくなった。「お嬢さん、お祖父様は当院で最善の看護をさせていただきます。ご安心ください……」

「セキュリティシステムを見せていただきたいのですが」

灰原優歌が遮って言った。

院長は一瞬、呆然とした。

……

しばらくして、灰原優歌は制御室のコンピューターの前に座っていた。

傍らの技術者は思わず院長を見つめ、複雑な表情を浮かべ、馬鹿げているように感じた。

病院のシステムをハッキングした者は明らかにコンピューターの専門家なのに、院長は何を考えているのか、十八、九歳の少女を連れてくるなんて!??

技術者は眉をひそめ、「灰原さん、これは……」

「別に私が修正しなくてもいいんですけど」灰原優歌は物憂げな口調で、感情の起伏もなく言った。

彼らのシステムに入らなくても、柴田おじい様を守ることはできる。

その言葉を聞いて。

彼は思わず口を閉ざし、静かに灰原優歌が約十五分ほど修正するのを見守った。

「はい、これで次に侵入者があった場合、システムが通知してくれます」