第238章 撫で過ぎて毛を逆立てる

「……」

灰原優歌は言葉を失った。

それを見て、男の低くかすれた笑い声が、どうしようもなく色気を帯びていた。

「優歌、どうしたの?」

灰原優歌は眉を少し動かし、立ち上がろうとしたが、暗闇で何かに躓いてしまい、再び男の腕の中に倒れ込んでしまった。

灰原優歌は思わず、男の引き締まった腹部に触れてしまい、彼の小さな呻き声を聞いて、顔を赤らめ、心臓が高鳴った。

「お兄さん、私……」

灰原優歌が説明を終える前に、男の瞳と目が合ってしまった。

男は木の板に斜めにもたれかかり、軽薄な眼差しで、瞳の奥には濃密な闇を湛え、全身から色気と危険な雰囲気を漂わせていた。

しかし。

この時、灰原優歌はまた薄暗い光の中で、男ののどぼとけに目が行ってしまった。

だが次の瞬間、灰原優歌は素早く視線をそらした。