灰原優歌:「……」
最初から最後まで、灰原優歌は無表情のままだった。
しかし柴田裕也はまったく気にせず、何枚も写真を撮った後、嬉しそうに待ち受け画面に設定した。
それを見た柴田浪も負けじと。
「優歌、僕、数学の問題がいくつか分からないんだけど、三兄に教えてくれない?」
柴田浪は哀れっぽく灰原優歌を見つめ、若々しさ溢れる反抗的な銀髪のショートヘアが、なぜか忠犬のような雰囲気を醸し出していた。
灰原優歌が下を向くと、確かに彼の携帯には数学の問題が何問か保存されていた。
その様子を見て、柴田裕也は心の中で計算高い奴めと呪った。
柴田浪は雲城大学数学部の学生だが、普段はクラブで過ごすことが多く、大学にはあまり行かない。しかし成績が優秀なため、大学側も大目に見ていた。
なのに今、彼は厚かましくも優歌に問題を聞くなんて!!?
灰原優歌はその問題をちらりと見て、柴田浪を見つめ、結局簡単に説明してあげた。
柴田浪は説明を聞いて、少し驚いた様子だった。
この問題は確かに解けたはずだが、優歌の説明した解き方の方が、もっと簡単そうだった。
「優歌、他の問題も教えてくれる??」
柴田浪は無意識に灰原優歌の方にもっと近づき、喜びに満ちた目で、さりげなく柴田裕也を見た。
露骨な挑発だった。
柴田裕也は心の中で冷笑した。
このガキ、自分には敵わないと思ってるのか?
次の瞬間。
柴田裕也は振り向いて、さりげなく柴田陸信に言った。「兄さん、浪は最近時間があり余ってるみたいだから、何か仕事を与えてみたらどう?」
柴田陸信の視線が、さりげなく灰原優歌と柴田浪の近づいた肩に流れた。
彼は淡々と言った。「浪に会社で修行させる時期かもしれないな。」
柴田浪:「??!」
卒業してから会社のことを覚えると約束したじゃないか??
……
この光景を見て、柴田の母は柴田裕香が普段自分に言っていた言葉を思い出した——
「ママ、私は何もしていないのに、どうして兄さんたちは優歌だけを好きで、私のことを好きじゃなくなったの?前は、兄さんたちも優歌のことを好きじゃなかったのに……」
柴田の母の目に冷笑が浮かんだ。
確かに灰原優歌の手腕が優れすぎて、彼女の三人の息子を手玉に取っているのだ。