この光景を受付嬢の目に映り、なぜか恋愛の予感が漂っていた。
久保社長とこの女性、まるでカップルみたいですね!!!
受付嬢も初めて見た、久保時渡がこんなに若い女性を大切にして、直接手袋を着けてあげるなんて!!
受付嬢だけでなく、会場の他の多くの人々も、VIPエリアのこの光景に気付いていた。
灰原優歌が弓を構えた後、右目を閉じて的の中心を狙った。
突然、後ろの男性の温かい指先が彼女の手の甲に触れ、男性の穏やかな低い声が魅惑的な磁性を帯び、温かい息遣いと共に彼女の耳元にかかった。
「こちらに少し寄せて。」
灰原優歌は全身が軽く震え、耳元が少し熱くなり、男性の冷たくて良い香りに包まれた。
なぜか安心感を覚えた。
灰原優歌:「……」
これじゃ的当ての練習に集中できない。
灰原優歌の思考は既に飛んでいた。男性の胸に寄り添う背中は、薄い生地を通して、男性の体温の熱さと心臓の鼓動を感じることができるようだった。
「放して。」
久保時渡の低い声が響くと、灰原優歌は的を見ることもなく、手を放した。
本来なら的に当たることさえ難しいと思っていたが、予想外にも、後ろの男性が調整してくれたおかげで、的の中心に命中した。
次の瞬間。
男性の瞳の奥に悪戯っぽい光が走り、軽薄な眼差しで、だらしなく冗談めかして尋ねた。「優歌、お兄さんが的当ての指導をしているのに、ずっとお兄さんを見ていてどうやって学ぶの?」
「……」
灰原優歌は美しい瞳で彼を見つめ、しばらくして言った。「お兄さん。」
「ん?」
「近すぎて、集中できません。」
灰原優歌は自分が気を取られた理由を全く隠さずに言い、むしろ瞳は澄んで真剣だった。
それを聞いて、男性は思わず笑みを漏らした。低くだらしない磁性のある声で、笑みを含んで、人を赤面させるような調子で。
「わかった、じゃあお兄さんは優歌から離れるよ。」
久保時渡は頷き、横に移動して灰原優歌に練習させた。
灰原優歌はエアライフルの的当てと近距離のアーチェリーを試し、すぐに上達した。
そして近くにいる久保時渡は、少女の眉間の不機嫌さが消えるのを見て、唇の端もゆるく上がった。
子供は何があったのか、今日はこんなに不機嫌だった。
「久保社長?」
突然、マネージャーが横から近づき、小声で呼びかけた。