「また今度にしましょう」
ヴィックは元気なく、柴田家が少しは顔を立ててくれることを願っていた。プロジェクトの中心が自分の部門でなくても、せめて長期的な協力関係を築きたかった。
そうでなければ。
Y.G.は彼のことを覚えているだろうか?
その時。
柴田浪は目を落として、携帯を机の上に置き、ヴィックに何か言おうとした。
しかし次の瞬間、ヴィックは突然身を屈めて、急須を取り上げてお茶を注ぎ始めた。ちょうど彼を無視するかのように。
柴田浪:「……」
そして。
柴田浪がヴィックと柴田家について再び話し合おうとした時、彼の携帯が振動して光り、ヴィックの手にある急須が突然震えた。
お茶がテーブルにこぼれた。
次の瞬間。
ヴィックは素早く動き、なんと柴田浪の携帯を真っ先に救い出した。
自分の携帯はそのままにして。
一同:「???」
ヴィックさんにこんな優れた品性があったとは??
他人を助け、自己を犠牲にする?
ビジネスマンにとって携帯の重要性は誰もが知っている。
一本の電話でも、莫大な金額が動く。
しかし今、彼らはヴィックが柴田浪の携帯を先に取り上げるのを目撃した。携帯を間違えたのか???
皆が困惑している中。
ヴィックは長いため息をつき、慎重にその携帯のロック画面の壁紙を見つめた。
「これは誰の携帯ですか?」
「……私のです」
柴田浪は即座に携帯を奪い取り、画面を消した。
これは明らかにヴィックに対して礼儀を欠いていた。
周りのメンバーはヒヤヒヤしていた。
しかしその後のヴィックの反応は更に人々を驚かせた……
「あの……先生、あなたの携帯の写真の方は……」ヴィックは無意識に手をこすり、やや緊張した様子で。
「妹だ」
柴田浪は警戒するような表情でヴィックを見つめた。この男の視線がどこか変だと感じた。
さっきからずっと彼のロック画面を見つめていた。
明らかに優歌に対して、不適切な考えを持っているに違いない!
「じゃあ、彼女は今どこにいるんですか??」ヴィックはそれを聞いて、目を輝かせた!
こんな形でY.G.の兄に出会えるなんて!
なんて幸運なんだ??!
柴田浪は、この40代の男が20歳にも満たない少女にこれほど興味を示すのを見て、即座に目の中の温もりが冷めた。