「ねえ、誰かが私のところでお風呂に入りたいって言ってるんだけど、いいかな?」
その瞬間。
灰原優歌は顔を上げて、自分が書いていたレポートを見た。
いつの間にか、レポートの大半に「久保時渡」と書かれていた。
「……」
彼女はこの男に呪いをかけられたのだろうか?
灰原優歌はすぐに大半の「久保時渡」を削除し、手元のレポートを書き続けた。
翌日。
灰原優歌は電話を受けた。柴田おじい様が突然体調を崩し、彼女に秋木謙と一緒に音楽演奏会に行くよう頼んだのだ。
柴田おじい様も秋木謙が一人で行くことを心配していた。
「わかりました、おじい様」
灰原優歌はゆっくりと階段を降り、のんびりと言った。「あなたが彼にそんなに優しいなんて、彼があなたの実の孫なんじゃないかと疑ってしまうわ」
「また何を言ってるんだ、お前は?」