第601章 大半篇の「久保時渡」(補1)

「ねえ、誰かが私のところでお風呂に入りたいって言ってるんだけど、いいかな?」

その瞬間。

灰原優歌は顔を上げて、自分が書いていたレポートを見た。

いつの間にか、レポートの大半に「久保時渡」と書かれていた。

「……」

彼女はこの男に呪いをかけられたのだろうか?

灰原優歌はすぐに大半の「久保時渡」を削除し、手元のレポートを書き続けた。

翌日。

灰原優歌は電話を受けた。柴田おじい様が突然体調を崩し、彼女に秋木謙と一緒に音楽演奏会に行くよう頼んだのだ。

柴田おじい様も秋木謙が一人で行くことを心配していた。

「わかりました、おじい様」

灰原優歌はゆっくりと階段を降り、のんびりと言った。「あなたが彼にそんなに優しいなんて、彼があなたの実の孫なんじゃないかと疑ってしまうわ」

「また何を言ってるんだ、お前は?」