第603章 彼が望むことのできない存在(補3)

灰原優歌は軽く唇を曲げ、だらしなく裾を払った。

「それに、この人は私の友達よ」

言い終わると。

灰原優歌は秋木謙と一緒にその場を去り、若い女性だけが顔色を悪くして残された。

この少女には、彼女がどうしても真似できない生まれながらの雰囲気がある……

女性は唇を噛み、振り返って外国人男性を見た。

彼も驚嘆の眼差しで灰原優歌の背中を見ていることに気づき、心の中でさらに妬ましさが募った。

「あの人、あなたは彼女が好き?」

吉村鈴は思わず尋ねた。

それを聞いて、男性は頷こうとしたが、最後には首を振るしかなかった。

それを見て。

吉村鈴の心はようやく少し落ち着いた。

しかし男性の視線はまだ、先ほど灰原優歌が去った場所に留まっていた。

あの少女は、一目見ただけで彼が思いを寄せられる存在ではないことがわかった。