第25章 彼女は完全に変わってしまった

一晩の休息を経て、海野桜はもう大丈夫になっていた。

彼女は首を振り、体を起こして、困惑した様子で尋ねた。「私、どうしたの？」

昨夜どうして気を失ったのか、まったく覚えていなかった。

東山裕は彼女を見つめる目が急に深くなり、「医者によると、あまりの恐怖で心臓の鼓動が乱れて気を失ったそうだ」と言った。

海野桜は少し戸惑った。

あまりの恐怖……？

男性の声は探るような調子を帯びていた。「昨日のことで、そんなに怖かったのか？」

理屈から言えば、昨日の事故で人が気を失うほどのことではなく、子供でさえ気絶するほどではないはずだった。

海野桜は臆病な性格ではないのに、どうして恐怖で気を失うことがあり得るのか？

とにかく、彼女が気を失った理由は不可解すぎた。

しかし、本当に怖がっていた可能性も否定できなかった。

海野桜は頷いた。「怖かったわ。林さんは大丈夫？何も問題ない？」

東山裕はまた意外な表情を見せた。

彼は彼女が自ら林馨の状態を気にかけるとは思わなかった。その口調も人の不幸を喜ぶような様子ではなく、ごく淡々とした質問だった。

「彼女は大丈夫だ。少し怪我と驚きはあったが、大した問題はない」

「そう」海野桜は頷き、それ以上何も言わなかった。

東山裕は複雑な表情を浮かべた。昨日、彼が彼女を置いて林馨を病院に連れて行ったうえ、彼女も気を失ったのだから、理屈から言えば、目が覚めた後に悔しがって大喧嘩になるはずだった。

しかし彼女の反応は静かすぎた。まるで完全に別人になったかのように静かだった。

いや、数日前に目覚めてから、彼女の様子がすっかり変わってしまっていた……

最初は彼女が戦略を変えて、駆け引きをしているのだと思っていた。

今となってはそうではないようだ。

彼女を試すために、彼は意図的に続けた。「林馨は隣の病室にいるが、まだ目を覚まさない」

海野桜は彼を一瞥し、突然あることを思い出した。

前世のパーティーでも、同じような事故が起きて、林馨が東山裕を救ったのではなかったか？

だから彼は病院で一晩中彼女の付き添いをして、家に帰らなかったのか？

もしそうだとすれば、前世で彼女は彼らのことを何度も誤解していたことになる。

最初は誤解だったかもしれないが、彼女が常に彼と争い続けたことで、後には本当に彼らの感情を深めてしまった……