第29章 彼の陰鬱な眼差し

結婚して一年、彼女はここで家庭の温もりを感じたことがなかった。

この場所は、最初から彼女の家になるはずがなかったのだ。

幸い、まだ引き返すことができる……

明日には新しい人生を手に入れられると思うと、海野桜は期待に胸を膨らませ、重荷から解放されたような気分になった。

思わずベッドの上でくつろぎながら、これからの人生をどう過ごそうかと考えていた。

以前は勉強が嫌いで、頭の中は東山裕のことばかりだったから、結婚後は学校を辞めてしまった。

でも人生をやり直せるなら、もうこんな風に無駄にはできない。

勉強しようと思うけど、何を学べばいいのだろう?

海野桜は悩んでいた。本当に何を学べばいいのか分からなかった。

まあいい、まずは離婚してから考えよう。将来のことは後で考えればいい。