第33章 東山裕の母

もちろん彼と同じ部屋に住むわ!

そうしないと彼の母親が疑いを持ってしまう。今は両親に離婚のことを知られるわけにはいかないの。

もし知られたら……

東山裕は目を細めて、「早く荷物を片付けろ!」と言った。

そう言うと、彼は部屋を出て、別の部屋で休むことにした。

海野桜は何も反対せず、すぐにメイドに荷物を全部片付けるよう指示した。

************

東山裕の両親も福岡市に住んでいたが、彼らとは少し距離があった。

時々、彼女は東山裕について実家に食事に行き、両親に会いに行っていた。

東山裕の父は威厳とカリスマ性のある男性で、「東山」グループの創設者だった。

母親の鴻野美鈴は、かつて福岡市一の美人と言われ、学識も教養も優れていた。

東山裕は両親の全ての長所を受け継ぎ、完璧すぎるほどの人物だった。