東山裕は目を光らせ、何も言わずに携帯を取り出して海野桜に電話をかけた。
「申し訳ございません。お客様のお電話は現在電源が切れています…」
携帯を収めると、東山裕は秘書に命じた。「ドアを開けに行かせなさい。」
「はい。」
他の人たちは笑うことも出来ず、明らかに何か異常を感じ取っていた。
「社長、私たちは先に部屋に戻ります。」
東山裕は頷き、淡々と笑って言った。「今日は皆さんお疲れ様でした。夜はゆっくり祝いましょう。」
「社長もお疲れ様でした…」
皆が次々と去っていく中、林馨は残りたかったが、理由がなかった。
しかし彼女は賢く、何が起きたのか大体察していた。
きっと社長が海野桜を連れて行かなかったため、彼女が怒って出て行ったのだろう。
林馨は海野桜と何度か接触したことがあり、彼女の性格をよく知っていた。ちょっとしたことですぐに火がつく性格だった。