「なぜ突然停車したの?人が死ぬわよ!」
東山裕は理由もなく怒りを爆発させた。「ただの犬だろう!」
海野桜は一瞬驚いた後、苦笑いを浮かべた。「犬がどうしたの?犬にも命があるわ。犬の命だって尊重されるべきよ!」
「犬に対して尊重を語れというのか?」東山裕は冷笑した。「犬は犬だ。尊重なんてできない!」
彼の言葉に、海野桜は妙に耳障りを感じた。
何がそんなに気に障ったのか、本当に理解できない状態だった。
「いいわ、あなたに尊重してもらう必要なんてないわ!前の広場で停めてちょうだい。そこで降りるから!」高速道路を出ていなければ、今すぐにでも降りたいくらいだった。
東山裕の気配は冷たく、心の中の苛立ちは抑えきれなかった。
海野桜は彼が動かないのを見て、不機嫌そうに言った。「早く行ってよ。ここは高速道路よ。いつまで止まってるつもり?」
東山裕は彼女を冷ややかに一瞥し、突然アクセルを踏み込んだ!
「きゃっ……」車が突然動き出し、海野桜は再び驚いた。
東山裕は絶対にわざとやったに違いない!
海野桜は怒りを抑え、彼と同じレベルには落ちまいと思った!
そんな時、彼女の携帯電話に着信があった。
電話は橋本友香からだった。海野桜は感情を落ち着かせて電話に出た。「もしもし、友香、何かあった?」
「桜ちゃん、容疑者が捕まったわ!警察から今すぐ警察署に来るように連絡があったの。」
「捕まったの?!」海野桜は喜んだ。「よかった、すぐに行くわ。」
東山裕は彼女を見て、何かを察したようだった。
海野桜は携帯を片付けながら、彼に言った。「警察署に行かなきゃならないの。前で降ろしてくれる?」
「ちょうど私も行くところだ。」東山裕は低い声で答えた。
「あなたが行って何するの?」海野桜は不思議そうに尋ねた。
男は冷笑した。「こんな事、お前に任せておけるわけがない。それに、お前は今でも名目上は私の妻なんだぞ!」
だから何があっても、この件に関わるつもりだった。
海野桜は彼の意図を理解し、「好きにすれば」と言った。
どうせ彼が対処しても問題ないのだから。
……
海野桜たちが警察署に着いた時、東山裕が手配した弁護士も到着していた。
彼らは形式的な手続きのために来ただけで、残りは全て弁護士に任せることになっていた。