第213章 愛は偽れない

前世、彼女は監禁されていた日々、毎日冷たく暗い部屋で丸くなることしかできなかった。

毎晩、家のすべてを狂おしいほど恋しく思っていた。

おじいさんの慈愛、張本家政婦の料理、そして家の暖かい布団。

あの時、彼女は本当に絶望していて、二度と生まれ変わる希望はないと思っていた。

しかし、彼女は生まれ変わった……

海野桜は本当に天に感謝していた、このような貴重な機会を与えてくれたことに。

だから今世は、誰かを恨むことなく、過去にこだわることなく、ただ良い人生を送りたいと思っていた。

ただ予想外だったのは、彼女が手放したのに、東山裕がまだ手放せないでいることだった。

海野桜はバカではない。今日の東山裕と相良剛の決闘は、過去の恨みだけでなく、彼女のことも原因かもしれないと感じていた。

相良剛もきっと、彼女と東山裕のことを前から知っていたはずだ。そうでなければ、今日あんなに平然としていられるはずがない。

でも、なぜ彼女のために決闘する必要があったのか?

「お嬢様、東山坊様は大丈夫ですから、ご心配なさらないで。」張本家政婦は彼女が東山裕のことを心配して呆然としていると思い、慰めの言葉をかけた。

海野桜は彼女を見上げ、突然抑えきれずに言った。「張本さん、知ってる?今日、東山裕は死にかけたの。」

張本家政婦は驚いて、「そんなに深刻だったんですか?!」

「この前も私を助けて、死にかけたわ。」

張本家政婦は彼女の向かいに座り、ため息をつきながら言った。「東山坊様は本当にお嬢様に本気の感情を持たれたようですね。以前はこんなことなかったのに。」

海野桜の目が揺らめいた。「でも、私はもう彼のことを愛していないの。」

「お嬢様、それで構いませんよ。」張本家政婦は諭すように言った。「愛していないならそれでいいんです。無理する必要はありません。以前の東山坊様もそうでしたよね。愛していないものは愛していない。愛情は偽れないものです。本当に感情があれば、愛していないふりもできません。でもお二人とも、愛してしまったら引き返せない人なんです……いいえ、お嬢様が目覚めてよかったです。」

違う、彼女は一度死んで初めて目覚めることができたのだ。

そうでなければ、彼女も引き返せなかっただろう。

だから心配なのは、今世の東山裕も引き返せなくなってしまうのではないかということ……